福田フクスケのリズミカルな地団駄

フリーライター福田フクスケによる、筋トレのような自慰行為のような写経のような、呪いにも祈りにも似たサービス精神の欠片もない日記。

【20150526】文体で読ませたい

俺が編集で参加している『SOLO』というWEBメディアで、連載の担当をさせてもらっている地下セクシーアイドルユニット“ベッド・イン”のコラムが、すごい。
お2人ともまだ20代でありながら、80年代末〜90年代初頭のバブル文化に傾倒し、ボディコンに身を包みながらバブル期の死語を使いこなすキャラクターで、今ライブシーンで大注目されている、いわばコンセプチュアル・バンドなのだが、この2人、演奏やパフォーマンスだけでなく、文章を書かせてもおもしろいのだ。

sololife.jp

どうだろう、この速射砲のように繰り出される、過剰なまでに詰め込まれたバブル用語&死語&固有名詞&下ネタ&もじりの数々。
「やまだかつてない」「マンモスうれP」「マル金パパ」「沖田浩之」「かぼちゃワイン」「MUGO・ん…色っぽい」……本当は、逐一ぜんぶに注釈をつけたいくらいで、それだけでも連載が進むうちにサブカルチャーとして価値のあるバブル用語辞典ができそうだが、しかし一方で、いちいち解説をしてしまうのは野暮なのではないか、という気もするのだ。

私たちはプロが創作した文章を読むとき、ビジネスメールでもないのに、「共感できること」や「理解できること」に重きを置きすぎてはいないだろうか。
「わからないからおもしろくない」というのはひどく貧相な考え方であって、「何を言ってるかわからないけどおもしろい」「知らない単語ばっかりだけど読んでいて楽しい」というのも、文章を読む価値や醍醐味のひとつであるはずだ。
何が書かれているかの「意味」ではなく、どう書かれているかという「文体」だけで、文章が評価されてもいい。それが文章で「芸」を見せるってことだと思う。そういう意味で、ベッド・インのお2人は、めちゃめちゃ「芸」のある文章を書く人たちだ。同じ書き手として嫉妬する。

だからしばらくは、このベッド・インの連載コラムを通じて、一行に3つ以上の固有名詞と当て字ともじりが詰め込まれた、言葉の濁流に飲み込まれて翻弄されるという経験を、みなさんに楽しんでもらいたいなと思う。

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またしても、マイナビのブックレビューの仕事を1本いただく。すでに今週は、マイナビじゃない別のレビューが1本あり、そしてさらに違う媒体でもう1本、識者の方がしゃべる書評を聞き書きでまとめるという仕事がある。
最近、レビューを書くための読書しかしていない気がするが、まあぶっちゃけ、そうでもしないと本を読む時間がないからありがたいっていうのもある。お金を払って買った本を読み、その本のレビューを書いてまたお金がもらえる。正しく循環している、うまみのある仕事じゃないか。
これまでマイナビで書いたレビュー記事は、やはり持ち前の生真面目さを発揮してしまい、かなり原書に忠実に丹念に中身を紹介するような原稿になったが、こちらも徐々に、テーマを絞りながら独自性のある視点と切り口と、いくばくかの「おもしろ」を、原稿ににじませていくようにしたい。

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早稲田の名店『メルシー』で、はじめてラーメンではなくポークライスを頼んでみた。うすーくまだらにケチャップ色で染まったご飯に、玉ねぎと豚肉が入ったシンプルな一品。素朴だ。食べてみると、意外と塩が利いていて、「オムライスの中身」を想像していたら、「薄いケチャップ色の焼き飯」だった。圧倒的に、素朴だ。東京チカラめしは次々と閉店しているらしいが、東京ソボクめしは、淡々とここに健在である。
わざわざ外食で500円払って食べるものでもないかなーと思ってしまったのは、男には誰でも「俺の作ったチャーハンが一番うまい」という根拠のない(そしてどうでもいい)自信があるからだろう。